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才能の真偽

5

人がある一定の範囲において礼儀正しく並んでいる。どうやらその場所には
珍しい光景らしく、一般客と呼ばれるその他の人間達が首をわざわざ
無理な方向に角度を変えてまで、人の列を気にしていた。
一般客の注目を集めたそれらは全員女性で灰色の制服を着ている。
並びこそ礼儀正しいものの私語が飛び交っており、度々若干名の大人の
注意が空間に響いている。
「では、館長さんにご挨拶を頂きたいと思います」
人の波が一斉に見つめる先に立っていた女性が、一人の男をその場に呼んだ。
すると端からぎこちなくその男は顔を出し、ざっと120人はいるであろう
列の、先程女性がいた場所に立って一礼した。
「えー、聖・平原女子高等学院の生徒の皆様。我がミーネス美術館へ
ようこそおいで下さいました。私が美術館館長の多仲(たなか)啓司と申します。
こんな良い天気の中で、若く希望に満ちた皆様に芸術を楽しむお手伝いを
させて頂けて大変嬉しく感じております」
窓から空を見ると、多仲の言う通り果てしなく青空が広がっていた。
今日は一年に一度の聖・平原女子高等学院、略して平女の二年生達を対象にした
校外社会見学として平女の生徒達が、ここ、ミーネス美術館を訪れていた。
今はロビーに集まり、注意事項等の確認をする集会を一斉に行っている。挨拶は続く。
「当館は、私の以前の仕事で知り合いになった画家の作品を展示しております。
従って皆様がご存知の様な有名な画家の作品は少数と思います。
実際、来場者の数はそんなに伸びませんで、本日皆様が
ご見学にいらっしゃっているこの日が過去一番当館が賑わってると
言っても過言ではありません」
冗談のつもりで言ったのだが、存外に生徒達の反応は薄く多仲は戸惑いを隠せず
一瞬たじろぐ。一度咳払いをし、「ですが…」笑顔を作り両手を広げ
場内を見回しながら、言った。
「遠い所からわざわざ足を運んでご覧頂く価値のある素晴らしい作品ばかりだと、
私は自負しております。せっかくの機会ですので、今日は心ゆくまで
画家達の絵筆に宿したメッセージに耳を傾けて頂ければなと思います」
有難うございました、とまたその場で一礼した。数人の生徒が先程の多仲の仕草に感化されて、
ちらと場内を見回した後、続いて生徒達の拍手が美術館のロビーに響く。
「…そのコンセプト、嫌いじゃないね」
人の波に混ざって話を聞いていた音色の耳元で、嬉しそうな声が聞こえた。
のぞみだ。いつの間にか列からすり抜け音色の隣よりも少し後ろに立っていた。
あまりにも唐突なその出来事に拍手からワンテンポ遅れて「ぎゃっ」と
口から漏れてしまう。周りの生徒の視線が音色とのぞみに集まった。
一人の黒いパンツスーツに身を包んだ女性が涼しい視線を音色達に向けた後、
右手でくいと手招く動作をしたのが見えた。
「音色、お呼び出しだってよ」
「あんたもな!」
溜め息を吐くと、音色は大げさに肩をすくめた。

「呼ばれた意味はわかってるわよね」
館長の挨拶が終わった後、失態をおかしたのぞみと音色は黒いパンツスーツの女性、
すなわち彼女らの担任である内田の誘導のもと説教をまさに今聞かされようと、
昼休み返上で館内の会議室に呼び出されていた。他の生徒は社員食堂に移動し、
見学した芸術の感動を語らいながら一足先にワイワイと弁当を広げている。
その声を微かに感じながら、音色は目の前にいる腕を組んだ鬼に
納得のいかない顔で食い下がった。
「先生、挨拶の最中に列から抜け出したのは木嶋さんであって私には
怒られる理由がないように思いますが」
「な…音色友達を売るつもり!?」
「私は真実を話してるだけよ」
音色の発言に泣きそうな声をあげるのぞみ。呼び出されて早々言い争いを始めた
二人を、内田の咳払いが遮った。びくんと反応する。
「そうね。確かに今回の件で問題があるのは木嶋さんだけね」とのぞみを見る内田。のぞみの顔が歪む。「けれど」
そのまま内田の視線は音色に移る。
「一ノ宮さんにはまだあの件で話を聞いていないから」
「あの件?」
「ラブレターよ」
瞬間、音色の顔も歪む。のぞみとお揃いになった。先日の"ラブレター事件"。
その場は音色達が逃げるように帰路について丸く収まったように思えたが、
残念ながら他の生徒の添え口により職員室にまで伝わっていた。過去にも一度起きている。
つまり今回で二度目。下駄箱にたかがラブレター一枚が入るだけで一つの"事件"として
問題視される理由は音色の通う高校の運営形態によるものが大きい。
聖・平原女子高等学院。読んで字の如く、平女は女子校。教員以外、男子禁制なのである。
「今回で二度目よ。平女は由緒正しい歴史を持つ、厳正で神聖な高等学院です。
勿論男子禁制。下駄箱に手紙が入っていたというのは
何を意味しているか…一ノ宮さんわかる?」
「…単純に考えれば、他校の生徒、もしくは校外の人間が平女に不法侵入してるかも」
「その通りです」内田は音色達に背を向け、早歩きで会議室の机に腰掛ける。
「この事実は、当学院にとって大問題よ。例え、直接的に貴女のせいではなくても、ね」
音色は俯くしかなかった。この事については今回のように過去一回、
同じ様に教員から注意を受けていた。たとえ、自分のせいでなくとも
外部の人間が無断で校内に侵入するという行為は一般的な目で見ても
立派な犯罪だからだ。悲しい事に、その部分の決まり事はキリスト教の下
造られた平女の中では特に厳しく、被害者であるはずの音色にさえ責任が免れない。
音色はキリスト教信者ではないが、発端の原因が自分にある事は明白だった。
「…あの話は断ったんですってね」
唐突に言った内田の言葉に音色は、一瞬理解できずに眉に皺を寄せる。
少しして、はっ、と何かを思い出し視線を泳がせた。表情が暗くなる。
「よく、ご存じですね。はい、断りました」
自分をかやの外に放り、話を進める二人を交互に見ながら瞬きをするのぞみ。
話が見えない。断った?何を? 真意を掴みたいが為に音色をじっと見ると
少し涙目になってるのに気づき、驚く。本当に訳が分からなくなる。
「私には、将来やりたい事があるんです。やるべき事があります。
…今回は本当にすみませんでした」
音色の口から謝罪の言葉が漏れた。声は震えていた。腕を組みながらも
内田は眉を上げ音色を見つめる。優しく見つめる。
「…お疲れ様。もういいから、戻って昼食にしなさい」
「はい。失礼しました…」
遠慮がちに一礼した音色は、少しふらつきながらもゆっくり内田を背にし会議室を
出ようと歩き出す。続いて、じゃあ私も、とあからさまな愛想笑いで
音色の後をついて歩きだしたのぞみを、内田は館長挨拶直後の涼しい視線で追った。
「木嶋さんは、残りなさい」
のぞみの顔が、また歪んだ。
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プロフィール

JUNE

Author:JUNE
JUNE(ジューン、ジュン)
旧PN:十文字貴人
男 4月25日生まれ
血液型:A
好きな事:映画鑑賞、読書、落書き、英語勉強
人間は「人生」においては誰もが素人。だから、焦らず楽しもう!

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